溶接にも大きく2つあることをご存知ですか?
建設現場などではおなじみの光景である溶接作業。実はその溶接にも目的別に大きく分けて2種類あり、それぞれメリットやデメリットがあります。 今回はその違い・ポイントについてです。
- アーク溶接とは…
- ティグ(TIG)溶接とは…
「被覆アーク溶接」とも言われますが、一言でいうと金属の棒で、火花を飛ばしながら溶接していくのがアーク溶接です。
目的としては「鉄鋼」を溶接(つなぎ合わせることです)に使われます。
アーク溶接では「アーク放電」という現象を利用します。これは気体の放電現象の一種で、空気中に発生する電流のことです。
わずかに離れた2つの電極にそれぞれ電圧をかけていくと、やがて2つの電極の間に電流が発生し、同時に強い光と高い熱を発生します。これを利用するわけです。
「アーク溶接」は、溶接棒(またはワイヤ)が溶ける「消耗電極式(溶極式)」と、溶けない「非消耗電極式(非溶極式)」の2種類に大別できます。
アルゴンガスを使用するため現場では「アルゴン溶接」と言われることもあります。
片手で金属棒のようなものを持って溶接し、火花が飛んでなければTIG溶接です。
はんだ付けをイメージするとわかりやすいと思いますが、非溶極式(非消耗式)なので電極自体は溶けたり消耗しません。
主にアルミやステンレスなどの非鉄金属を溶接したいときに使用する方式なので、車やバイクなどの溶接によく使われています。
※溶接にはこのほかにも電源を使用しないガス溶接などがあります。
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- アーク溶接のメリット・・・
- アーク溶接のデメリット・・・
なんといっても設備が整いやすくコストがかからないことが挙げられます。
アーク溶接は使用する設備構造が他の溶接方法と比較すると簡単で、機器自体も小型で安価に購入することができます。
ホームセンターなどでも器具が販売されています。
また接合部分は高温度で溶かされた後に溶接棒の素材と一体化していくため、仕上がり後の強度は高いといえます。
また被覆アーク溶接やセルフシールド溶接の場合は屋外などの使用にも十分対応できます。基本的にガスを使用しません。アーク溶接では「スパッタ」と言われる金属の粒が多く飛び散ってしまうというデメリットがあります。
これはアーク溶接をする場合火花の中に、その溶けた金属の粒が混ざってしまうため近くの金属にその粒が触れ、冷えてくっついてしまうのです。
アーク溶接の場合、溶接したての部分には、このスパッタやスラグ(溶接した部分に付着する茶色のカス)やススが付いているので、溶接後はこうしたものを掃除しておく必要があります。
こうしたこともあり仕上がり後の外見がそれ以前と変わってしまう部分があるため、見た目重視される部分の作業にはあまり向いていません。
またヒュームという、溶接の際に発生した金属蒸気が凝集して微細な粒子となったものも発生するため、誤って吸入してしまうと健康に害がある場合もありヒューム熱などの原因になる場合があります。 -
- TIG溶接のメリット・・・
- TIG溶接のデメリット・・・
火花が飛ばず、スパッタ(金属の粒)がほとんど飛ばないので、溶接部をよく見ながら作業ができ正確性が確保できるということに加えて、仕上がりがきれいに見えるというのが一番でしょう。
また作業音がアーク溶接と比べてとても静かなこともメリットと言えそうです。またTIG溶接の場合は個人で使う場合に資格がいらないことはメリットのひとつです。
比較的初心者でも手を出しやすい溶接と言えるのではないでしょうか。溶接速度自体はアーク溶接と比較すると遅いので時間がかかってしまい、一般には5-10倍かかるといわれています。
またTIG溶接はシールドガスで溶接部を保護する方式なので、屋外など風が吹いているとシールドガスが風に飛ばされてしまい支障が出ます。
また火花は出ませんが溶接時に強い光が発生することに変わりはなく、溶接面や保護メガネなどを使用しなければなりません。
- アーク溶接…アーク溶接等の業務に係る特別教育が必要
- TIG溶接…個人でする場合には特に必要ない
労働基準法から分離した労働安全衛生法の労働安全衛生規則でも定められてた通り、アーク溶接の作業者は特別教育を済ませておく必要があります。
このアーク溶接の特別教育は全国の商工会議所、一般企業、公的機関などで実施されています。
金額は受講を受ける場所で異なりますが、テキスト代などを含め10,000円から25,000円程度のところが多いです。
合計で11時間の学科と10時間の実技を受講することで修了となりますので日数としては、学科なら大体1日半、実技も加えると3日間の日数で講習が完了するところが多いようです。
修了証を取得しておくことで、鉄工所や製造メーカーなど活躍できる場が広がる可能性もあります。
TIG溶接の場合個人でする場合は特に作業に当たり資格を取る必要はありません。
しかし業務としてTIG溶接に携わる場合はJIS溶接技能者の資格を持っておくに越したことはありません。
これは講習を受ければ自動的に資格が取れるというものではなく試験(筆記、実技)に合格することで得られるので技量の証明ともなります。
この資格は溶接の発注者からの溶接施工等に関する仕様書などで、要求される溶接品質を確保するために、製作者が信頼性を証明する手段の 1つとして用いられています。
どちらの溶接も光や熱などが発生するので十分に体を保護する装備を用意して臨みましょう!
体験談
アーク溶接とガス溶接の資格は、一応持っています。
実務経験はアーク溶接が1年ほどなので、これからアーク溶接を始められる方向けです。
最初に困ったことは溶接棒が母材につき、アークが飛ばないことでした。
溶接棒の先端に不純物が付いていることが原因であることが多いです。
解決策としては使用しない鉄板にタッチアンドゴーです…
鉄板とアークが少し(こする程度)出すことを数回繰り返すと、先端の付着物を取り除くことが出来ます。
母材は溶接する前は、ブラシなどできれいにしましょう。
溶接棒が取れないときはホルダから溶接棒を離します。
溶接棒が高温になるのを防ぐことが出来ます。
溶接個所が大きいとき。
DIYであれば多少の溶接で済むと思いますが、万が一大きな個所を溶接する際は1回でやらないことです。
1回でやろうとするとスラッグができやすいです。
複数回に分けて行います。1回毎に溶接カスなどは取り除きます。
グラインダーがあればデコボコを平らにしましょう。
アークが安定しないとき。
アーク長は2~3mm程度にすることが重要ですが、最初は溶接棒が溶けるスピードに合わせるのが難しく安定しないことが多いです。
慣れで直していくしかありませんが、コツは小さく左右(2cmほど)に振ることです。
1本をまっすぐ引きたいときに溶接棒の溶けるスピードと溶接棒をまっすぐに動かすと2つの動作を同時に行う必要があります。
左右に小さく振ることで、多少の余裕ができ落ち着いて行うことが出来ます。
アーク溶接では事前準備が重要です。
溶接個所に不純物が付いていることや溶接棒の先端に不純物が付いていることなどは溶接前に取り除きましょう。
溶接個所が深い場合はグラインダーで回りも削ることが大切です。
事前準備で溶接のやりやすさが変わります。
溶接後
溶接跡が目立つのが好きではない方もいると思います。
グラインダーで目立たないように研磨することがおすすめです。
グラインダーは垂直にするにつれて、深く削ることが出来ます。
最後は平行に近づけて研磨することである程度きれいに仕上げることが出来ます。
体験談はあくまで私の1年間での経験になりますので、
ご参考程度にしてもらえるとありがたいです。